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| 「よく“元祖”とか“本場の”というフレーズを耳にしますが、僕は元来のレシピに忠実な料理が必ずしも美味しいとは思わないんですよ。国が変われば味の好みも変わるし、手に入る食材も違う。調理器具だって新しいものが開発されていますしね。そこまで料理が進化しているのに、わざわざ昔のやり方に固執する必要は無いというのが僕の考えなんです。」 |
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| 「こういったことはそれぞれの技法の正しいやり方を抑えていなければできません。本来なら鶏がらスープを使うところをかつおの一番だしと合わせようと思ったら、まず美味しい一番だしのとり方を覚える必要がありますよね。“基本”が無ければ“応用”もありません。やみくもに食材を取り合わせるだけでは、単に奇をてらった料理に終わってしまいます。創作料理を成功させるためには、調理法や食材の広く正しい知識が必要なんです。」 |
| 「料理は化学反応なんです。肉や魚に火が通るのは熱によるたんぱく質の変化ですし、素材に煮汁の味が染み込むのは浸透圧によるものです。塩茹でするお湯の塩分濃度や調味料の分量にも、なぜその割合にするのかという根拠があります。料理は“慣れ”や“感覚”だという意見もありますが、僕はそれだけでは不十分だと思います。確かに、誰かが完成させたレシピをまねして作れば料理はできます。でもそのレシピ以上の味を出すことはできない。逆に、食材を物質として見て、何をどうすればどうなるという化学的な変化を理解していれば、味や食感を自分の思い通りに仕上げることができるんです。それに、“慣れ”や“感覚”は他人に伝えることができませんよね。お店で出すときは同じメニューにばらつきがあってはいけませんから、プロだからこそ“化学的な根拠に基づいたおいしさ”を形作ることが必要だと思うんです。」 |
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| 「若いときは、とにかく自分の中に知識や技術を溜め込むことを考えていました。でも、シェフ(料理長)になったとき、どんなにすばらしい料理を作れても、それを他のスタッフにも伝えられなければ駄目なのだということに気がつきました。お客様は大勢ですから、僕1人ですべての料理を作れるわけではないんです。厨房の長という立場にいる以上、誰が作っても同じ味と質のものができるように指導する必要がありました。僕が料理の作り方に化学的な裏づけを求めるのには、そうした理由もあるんです。それから、お客様をお待たせせずに、適正な価格で召し上がっていただくためには、作業の効率や材料の仕入れの計算もできなければいけません。それらの面倒がきちんと見れて、はじめて僕自身の評価になるんです。自分の腕を磨くことだけに集中していたころと比べると、料理人としての視野は大きく変わったと思います。」 |
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| 「今は若いスタッフや新しいお店を育てることが、自分自身のステップアップだと思っています。厨房で腕を振るうだけが料理人ではないと思うんですよ。たとえば新しい飲食店のプロデュースのように、直接料理を作るという形でなくても、僕が手がけたものでたくさんの方を喜ばせることができれば嬉しいと思います。でも、やっぱり料理が好きですからね。自分にやれることをとことんやって、60歳くらいになったら、一人一人のお客様に合わせたおまかせ料理を出す小さなお店をやってみたいなと思っています。」 |
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